重機関銃を装備、中国武装船300隻の襲来
北沢俊美防衛相は11日にゲーツ米国防長官と訪問先のハノイ市内で会談し、沖縄県・尖閣諸島周辺における、わが国の領有権を侵害する中国の動きに対して「共通の危険に対処するように行動する」と記された日米安全保障条約5条の発動の対象となるとの認識で一致したと報道各社が報じた。
仮に、中国の軍艦が侵略の意図を持って、尖閣諸島周辺のわが国領海内に侵入し、軍事的対応をとらざる得ない状況になった場合、どのような形になるのか読者は、具体的なイメージをお持ちだろうか。
多くの方が、今回の北沢、ゲーツ会談での認識の字づらに浮かぶ印象から、日米安保によって、米軍の戦闘機や軍艦がただちに出動し、中国の軍艦に対して、砲撃を加える、あるいは、爆撃を行うものだろうと、漠然とした期待と希望を持って安心しているのではないだろうか。
昭和53(1978)年の4月12日に、そのような軍事的危機に至った際の米軍の対応を予測する、重大な事件が引き起こされていた。平成4年3月に第11管区海上保安本部が発刊した「南西海域の海上保安、20年の歩み」が、そのことを記している。
その日、午前7時半ごろ、哨戒中の巡視船「やえやま」のレーダーが、尖閣諸島のうちの魚釣島北北西海域上に、約300隻の船影を捉えた。
現場に到着した隊員たちの目に入ったのものは、重機関銃を備えた貨物船や、自動小銃を手にした兵士が甲板を駆け回る漁船であった。いづれの船も、中国旗である五星紅旗を掲げている。
「やえやま」の艦長は、独力での対応は困難と判断し、管区本部に応援を依頼する。1時間ほど経過したところで、上空に米軍機が飛来した。
飛来し、船団上空を旋回するだけの米軍機
「これで助かった」とやえやまの艦長は、米軍機の来援に一安心する。ところが米軍機は上空を旋回するだけで、支援するどころか、何の手を打とうともしない。
その間に中国武装船団は領海内に侵入し、魚釣島への上陸準備をはじめた。結局、2日後に全国から10隻の巡視船と4機の航空機を集め、船団を領海外へ退去させた。
追尾中の海上保安庁巡視船
まず、自衛艦の敵艦攻撃が米軍の支援条件
この事件から明白なように、中国が尖閣諸島周辺の領海内で軍事行動を展開した場合でも、米軍が進んで砲門を開くようなことは100%の確立でありはしない。
米軍は、当事国としての日本の自衛艦、あるいは巡視船が敵艦として迫る、中国の艦艇に対して一撃をくわえるのを待って、日米安全保障条約の発動による軍事行動に移る
日本の艦船が砲門を開かない段階で、米軍が攻撃を開始するということは、米軍ひいては、米国が紛争の当事者となることを意味する。日米の同盟関係があると言っても、他国の紛争を自国のものとして引き受けるというような、お人好しを米国政府が行うことはない。
中国と交戦 軍事的対立 その覚悟は?
既に、米軍内部では、尖閣諸島周辺における軍事行動の基準が段階別に設けられていることは間違いないが、自衛艦、巡洋艦を支援し、敵艦に対して砲弾を浴びせる段階に至るには、国際条理においても、米国民に対しても十全な理由を説明できる状況になってからだ。
尖閣諸島周辺領海内に中国政府が軍艦を差し向けた場合には、〜正当防衛に限って反撃が許されるという、摩訶不思議な現憲法の制約があるため、中国艦艇の砲弾を浴びるのを待ってということになるのだろうが〜自衛艦が攻撃に出るという段階に至らなければ、日米安全保障条約5条の発動はないということだ。
日本にふりかかってくる軍事的危機への対応は、米軍が第一義的に、前面に出て処理してくれるというのは、希望的観測に過ぎず、非現実的な話なのだ。
日本の領海内に差し向けられた中国の軍艦への大一撃は、読者が収める税によって建造された自衛艦、巡洋艦がくわえる。それは、国民として1億4千万人分の1の責任をもって、中国との軍事的対立のやおもてに読者も立つということだ。
あくまでも仮定の話ですが
あなたは、現在、その覚悟をお持ちですか。
[PR]