
「お笑いポポロ」(麻布台出版社)が、今月6日に発売された「お笑いポポロ vol.39」でその約10年の歴史に幕を閉じたことは記憶に新しい。同誌はアイドル誌「ポポロ」のお笑い版であり、主に2000年代のお笑いブームを牽引してきた。芸人のヌードグラビアや持ち物、恋愛の話などで賑わう紙面は、「ポポロ」の主な読者層である女子中高生からの大きな支持を得ることに成功した。
(画像は麻布台出版社HPより)
「お笑いポポロ」VS「お笑いTYPHOON!」の時代
そんな「お笑いポポロ」と、2000年代に双璧をなしていたのが「お笑いTYPHOON! JAPAN」(エンターブレイン)だ。こちらは2006年のお笑いTYPHOON! JAPAN Vol.18をもって休刊しており、そのコンテンツは芸人の内面に迫った部分が多い。芸人たちによる自身のネタやライブの解説や、その時の心情や目標などを深く語っているインタビュー記事は読み応えがあり、当時のお笑いブームを冷静な視点で分析していた。その姿勢から「硬派のタイフーン」と呼ばれることもあった。
2000年代のその他のお笑い誌たち
2000年代には、「お笑いスタイルLAUGH!」(竹書房)、「お笑い通信」(日経BP社)、「お笑いZOOM」(英和出版社)、「お笑いテレビライフ」(学習研究社)など多くの雑誌やムックが刊行されては、早期に休刊に追い込まれるという流れが多かった。これは、単にお笑いブームのかげりによるものであり、90年代のボキャブラブームによる雑誌「爆笑王」(双葉社)、「GooGya」(徳間書店)とほぼ同じ傾向と考えられる。
また、当時の特徴として、「H」(ロッキング・オン)や「クイックジャパン」(太田出版)等のサブカルチャー系雑誌においても、メイン特集としてお笑いが取り上げられ始めたことが挙げられる。このことは、お笑いは伝統文化であることとサブカルチャーであることの2つの定義を手に入れたことを意味する。以来、特に「クイックジャパン」においては、現在もなおお笑いはメインコンテンツとしての役割を果たし続けている。
女子中高生たちの需要にマッチするお笑い誌という媒体
現在、定期的に刊行されているお笑い誌は「お笑い男子校」と「マンスリーよしもとPLUS」(どちらもワニブックス)くらいであり、そのどちらも「お笑いポポロ」の系譜を継ぐアイドル的な扱いが多くなっている。
お笑いが食傷気味だといわれて久しいことや、出版不況にもかかわらず「お笑いポポロ」がここまで刊行され続けた理由は、読者であり、お笑いファンの主な層である女子中高生たちの存在が大きい。インターネットに触れる機会や行動範囲に制限があり、ライトな話題やビジュアル面を重視する彼女らがお笑いや芸人たちを身近に感じるには、ムックや雑誌が最適なのである。
「マンスリーよしもと」がライト路線の「マンスリーよしもとPLUS」にリニューアルしたことからも、とっつきやすい媒体でとっつきやすいコンテンツが求められていることが分かる。
「お笑いポポロ」休刊が象徴すること
それでも「お笑いポポロ」が休刊したという事実。これは、単なるお笑いブームの終焉ではなく、書籍自体の意義の変化、若年層のコミュニケーションツールの変化、お笑いやその他のコンテンツとインターネットの関係性など、社会全体から見ても大きな意味を示しているようである。
麻布台出版社 お笑いポポロ
[PR]