原作ファンも、うならせる実写ドラマの完成度
この夏の実写漫画ドラマ『ろくでなしBLUES』、『名探偵コナン 工藤新一への挑戦状』(ともに日本テレビ系)などの実写漫画ドラマが象徴するように、ここ数年人気漫画の実写化が相次ぎドラマ界のトレンドとなっているようだ。
ストーリー性豊かな漫画は、実写との親和性が高いものだが、原作へのイメージが色濃いだけに、『ろくでなしBLUES』2話の視聴率は2.0%、『名探偵コナン 工藤新一への挑戦状』4話の視聴率は5.6%と、万人が納得する作品にはなかなか出会えない。
そこで、ORICON STYLEが『実写化で成功したと思う漫画原作ドラマ』についてリサーチすると、音楽漫画の代表格で上野樹里&玉木宏のW主演で実写化された
のだめカンタービレ(フジテレビ系)がみごと1位に選ばれた。忠実に再現されたコミカル感はもちろん、リアリティ溢れる演奏シーンは「期待以上だった」などと絶賛されている。
のだめカンタービレは漫画家・二ノ宮知子さんが描く、クラシック音楽を題材とした漫画。桃ヶ丘音楽大学ピアノ科の学生で、楽譜を読むのは苦手でも、一度耳で聴いただけで完璧に弾けてしまう才能の持ち主であり、入浴は1日おき、髪は4日おきにしか洗わないという常識外れなズサンさと型破りな性格の野田恵こと
のだめと、同じピアノ科のイケメン先輩でピアニストの息子・指揮者志望という学校中の憧れの的でありながら、とある理由から自らの音楽に行き詰まり悩んでいる
千秋真一が、のだめや仲間たち、世界的指揮者シュトレーゼマンとの出会いによって、指揮者への道を開いていく物語である。
のだめをはじめ、それを取り巻く仲間たちも風変わりなキャラクターばかりだが「個性的な登場人物のイメージとキャストの演技が見事にマッチしていた」と、絶妙なキャスティングは原作ファンをもうならせるほどだった。また、俳優陣が実際に練習を積み重ねたという演奏シーンは、漫画では聞こえなかったオーケストラの『音の世界』を臨場感たっぷりに表現。少し敷居が高かった同音楽ジャンルのイメージを覆し、その後一大
クラシックブームを巻き起こすほどの影響力を誇るドラマに仕上がった。
続く2位は、連載が終わった今もなお、女性たちのハートを掴んで離さない神尾葉子さん原作の青春ラブストーリーの金字塔
花より男子(TBS系)が登場。原作は海外でも人気が高く、韓国や台湾でも実写化されている。台湾では原作のF4が実際のアイドルユニットになるなどかなりの影響力。
日本版では雑草魂でたくましく生きる女子高生・牧野つくし役を井上真央、財閥の御曹司で地位も名誉も顔もスタイルも何不自由ないオレ様キャラな道明寺司役を嵐の松本潤が好演し、漫画同様に息の合ったコンビネーションを実写でも見事に再現した。「原作と違う部分もあったけど、ドラマとしての良さがあってすごくおもしろかった」などと、脚本の良さを評価する声が目立ち、05年放送の第1シリーズから、続編、そして完結編は映画化もされ、映画化では最後に映った結婚式での写真が原作の絵に入れ替わるなどと、原作ファンを喜ばす1シーンもあり、大ヒット作となった。
3位は、シリーズ累計出荷680万部を突破する歴史医療ロマンを大沢たかお主演で劇化した
JIN-仁-(TBS系)。幕末にタイムスリップしてしまった脳外科医の主人公・南方仁が、医療器具もままならない中で命の尊さ、そして歴史を変えてしまうかもしれないという葛藤と向かい合う姿を描いた作品である。今年5月に『第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞』をするなど、プロ評価も高い異色作。
ドラマでは手に汗握るリアルな治療シーン、坂本龍馬をはじめ実在の偉人たちも登場する壮大な世界観を再現し「毎週見るのが待ち遠しくなる作りだった」「本物の坂本龍馬を見ているようだった」と男女・世代を問わず幅広いファンを獲得した。6月末に放送された完結編の最終回は、全シリーズを通して最高となる平均視聴率26.1%(ビデオリサーチ・関東調べ)を記録し、完成度・満足度ともに非の打ち所ない出来栄えを証明し、後世に語り継がれる名作となった。
漫画を実写化するというのは、脚本が出来ているので人物像や背景があらかじめ分かり、感情移入もしやすい。しかし、原作ファンの登場人物に対する思いはそれぞれだろう。万人が納得する作品は難しいが、いかに原作ファンも受け入れられるTOP10に入ったような作品を作り出すか、これからの実写漫画ドラマに期待したい。
のだめカンタービレ
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